★ システム導入の失敗例

 

典型的な失敗例(フィクション、ということで(^^;)

例:とある部品の卸売会社、A社の社長。
  「これからは企業はIT化無しに発展はない」、と同業者団体のセミナーで話を聞かされてきました。
  そういえば自社の流通関係は弱かったかなぁ、と殊勝に反省したりしてみます。
  そこで、流通業務についてIT化する事を決めました。
  まず手始めにということで、在庫管理のシステムを導入することにしました。

   1.IT導入ということでやる気満々の社長は、次の日さっそく役員会を召集した。
     ここで、在庫管理システムを導入することと、若くてパソコンに詳しいB君を導入責任者とすること、を決めた。
   2.役員会から直々に指名された入社3年目のB君、ここぞとばかり張り切った。
     現場へも出向いて意見を聞こうとしたが、どうも枝葉末節な内容に終始し、意見がまとまらない。
     このままでは進まないので、とにかく現状を見て、必要と思われる業務を詳細に調べた。
     中にはシステムの導入に反対で、業務の聞き取りにさえ非協力な人も出る始末。
     それでもB君はがんばって聞き取り調査を行った。
   3.B君、苦労しながらも一通りの業務の流れをつかんだ。
     その後、必要な条件をすり合わせ、何社かから見積もりを取ってみることにした。
   4.それらの見積もりを比較検討し、上司にも相談したうえで、C社のシステムを導入することに決めた。
     上司は、システムについては無知ということで、B君の意見に従っている。
   5.C社のシステムの導入についてついて、役員会の承認も得た。
     いよいよシステムが導入され、そしてシステム稼働の日…。

 さて、これではうまくいかないのは目に見えてますね。
 なぜでしょうか。
 原因を探ってみましょう。

 まず、自社の業務のシステム化であるのに、自社の業務内容をシステム屋さんに伝え切れていないのです。
 伝えるも何も、B君自身、業務について理解不足なのです。
 つまり、結果として現場の意見を吸い上げず、導入責任者のB君が自分の判断だけでシステム化をしようとしているのです。
 これでは、間違いなくとんちんかんなシステムが導入されることでしょう。
 吸い上げたには、現場にとって必要かどうかも分からない、事実としての業務内容だけ。
 使えないシステムということで、埃を被ってしまうのは明らかです。

 ところで、仮にも現場の意見を吸い上げようとしたB君ですが、現場現場で出てくる意見も異なり、意見の集約には相当
頭を悩ましたのではないでしょうか。
 現場の意見とは言いながら、中には個人レベルの自分勝手な意見もかなりの数が混じっていたことでしょう。

 全社として、システムの導入に積極的ではない問題というものも存在します。
 B君の業務の聞き取りに際し、「今のままで良い」と協力しない人の存在や、「自分は知らないから…」という上司の態
度なども大きな問題です。
 新しい変化に対応したくない社員というのは、予想以上に多いものなのです。

 企業秘密に関する内容に近くなると、果たして若いB君に正確な情報が入ってくるでしょうか?
 仮に入ってきたとしても、B君にそれを判断するだけの経験はあるのでしょうか?
 そんなときバックアップしなければならないのは上司であるのに、肝心の上司はB君の言うがままになっています。

 そもそも一番の原因は、役員会がパソコンに詳しいというだけで、B君を選んだことなのです。
 もっと言うなら、同業者団体のセミナーでちょっと脅されたからといって、確たる信念も無しに、漫然とシステムを導入
することを決めた社長にこそ、その責任はあるのです。

もっと小さなシステムなら?

 先に出した在庫管理システムなどは、多少とも大きなシステムでの例です。
 ではもっと小さなシステムではどうでしょう?
 先に書いたような問題点は出てこないのでしょうか?

 社長と奥さんの2人でSOHOを行っている、有限会社Dがあります。
 さて、社長は友人と飲みに行ったとき、「これからはIT化していないと、企業としては苦しいだろうな」などという
話を聞かされました。
 その友人の会社は、規模は自分のD社と同等ですが、会計などはIT化されており、現在の売上や利益などもリアルタイム
で見ることができるとのこと。
 給料計算は、簡単給与30人とかいう、フリーソフトというお金の要らないものを使っているといいます。(^^;)

 この話を聞いた社長は帰り道、「今は手書きで経理をしてるから、試算表ができるのも遅くなるんだなぁ」などと、試算表
の見方さえろくに知らない事を棚に上げ、自分勝手に色々と考えています。
 そして「俺はパソコンは触れないけど、家内は昔ワープロをしたことがあるとか言ってたな、家内にやらせるか。パソコン
もワープロも、そんなに違いはないだろうし。」と、独断で決めてしまいました。
 そして「でもあれだな、大切な給料計算なのに無料のソフトだなんて、良い物があるはず無いじゃないか」などと、ほろ酔
い気分の頭で、つらつらと考えている社長でした。

 帰ってくるなり社長は「おい、これからはパソコン会計だ」と、経理を任している奥さんに言い放ったのです。
 奥さんは、「今まで通り手書きでいいじゃない、何のためにそんなことをするの?」と聞きましたが、社長の意志は強固な
ようで、多少の酔いもあり「これからはIT化だ、IT化こそ我が社を救うのだ!」と答にもならない返事を繰り返します。
 「なに言ってんの、うちとこはそんなに危機的な状況じゃないでしょ!」というと、あきれた奥さんは「私はパソコンなん
て触れないからね」と言うや、さっさと布団に入ってしまいました。

 そして次の日、社長はパソコンショップへ出向き、店員と相談した上で、パソコン・プリンタ・会計ソフトを購入すると、
意気揚々と帰ってきました。
 プリンタは、店員はモノクロレーザーを強く勧めましたが、安くてカラー印刷もできるというインクジェットを選びました。
 パソコンは、ベアボーンキットとかいうものにすればもっと安くなったのですが、これだけは店員の真摯で強硬な反対で止
めることにしたのです。
 これだけがちょっと不満でしたが、まずまず上手な買い物をしたと満足げな社長でした。

 さて、会計ソフトをインストールしようとして、社長は自分がパソコンを扱えないことを改めて知ることになるのです。
 そもそも、文字を入力することさえままなりません。
 奥さん手伝うように言っても、「私はやらないからね、そんな無駄遣いして!」と、とりつく島もありません。
 仕方なく、あれこれ試しながら会計ソフトのインストールだけは、ようやく済ませることができました。
 全くの素人としては、よく頑張った方でしょう。
 ユーザー名の「有限会社D」が「ゆうげんがいしゃd」になっていたのは、ご愛敬でしょうか。

 しかし、結局この会計ソフトが使われることはありませんでした。
 それどころか、せっかく購入したパソコンさえ使われることがなかったのです…。






 さて、どうでしょうか。
  ○ トップの想いが全社に伝わっていない
  ○ トップが漠然とシステム化を決めたために、是非ともという思いが欠落している
  ○ そもそも、何のためにシステム化するのかという辺りが良く検討されていない。
  ○ 担当者がシステム化に反対している
  ○ 担当者レベルのワガママがある
  ○ 担当者への動機付けが不十分
  ○ 導入責任者が業務を理解していない、などなど…。

 上で書いた在庫管理システムの導入と、問題点は何ら変わらないのです。
 システム導入の失敗に、規模の大小は関係ないのです。
 もちろん、規模が大きいからこそ起こる問題、規模が小さいからこそ起こる問題はあるでしょう
 しかし、そういう事は本質的な問題ではありません。

どうすれば良かったのか?

 それでは、どうすれば良かったのでしょうか?
 まず社長が、○○を実現するためにIT化が必要なのだということを、明確にすることが必要だったのです。
 下の例でいくと、日々リアルタイムで試算表が見たい、という目標を明確化することが必要だったのです。
 そして、そのを実現するために、どの部分をどういう情報化をしなければならないかの検討が必要だったのです。
 これがあって初めて、業務改善にまで踏み込んだ情報化を行うことができるのです。
 反対する人には、飴と鞭で対処することも必要になりましょう。
 システムを導入することで、こんなに楽になるんだという事も、きちんと説明しなければなりません。

 要するに、当然のことをやっていなかったため、導入に失敗することになったのです。
 きちんとした手順を踏んでいけば、システム導入恐るに足らずなのです。

 

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