★ 税金Q&A

 

 事業主の方、企業等の経理に携わっている方々にとっては、税金については常日頃から親しまれている(いるのか…?(^^;))ことと思います。
 ところが、年末調整を受ける会社員、主婦、学生など、普段の生活において、税金とはあまり縁の無い方々にとっては、「税金なんて訳が分からないよ。」と言うのが本音ではないでしょうか。
 そこで、こういう方々からの相談が多い事例を中心に、Q&A形式で取り上げてみたいと思います。
 できるだけ、一般的なQ&Aには載っていないような内容になるように心がけてみました。
 でも中には、「知らなかった!」では済まないような事例もありますので、くれぐれもご注意を。
 そして、「税理士って便利かもしれない…。」と思っていただければ、私にとってこれ以上の喜びはありません。(^o^)/
 今後、時間の許す限り、項目や税目も増やしていきたいと思っています。

 ただ、その内容を説明するために設例を設けて、数式をかなり多用して計算しています。
 というのも、本当にその内容を知りたい方が、ご自分のパターンにあてはめて計算できるようにと考えたからです。
 そのため、かなり読みにくいかと思いますが、そういう事情ですので、ご理解下さい。

 なお、ここに記載した文は、すべて私の私見であることをお断りいたします。
 また、ここに記載している内容の全部又は一部についての無断引用・無断転載は、堅くお断りいたします。

 注:所得税では現在、20%の定率減税(最大25万円)が実施されていますが、計算では反映させていません。

 

☆ 所得税関係

    1.住宅取得控除           2.医療費控除の対象         3.パート・アルバイト収入
    
4.原稿料収入            5.医療費控除を受ける方が…得?   6.扶養親族の変更
    
7.内職収入             8.年末調整             9.
    10.                 11.                 12.
    13.                 14.                 15.

☆ 相続税関係

    1.相続税額の算出          2.                 3.
    4.                 5.                 6.
    7.                 8.                 9.
    10.                 11.                 12.
    13.                 14.                 15.

☆ 贈与税関係

    1.住宅取得資金           2.贈与税の配偶者控除        3.共同購入した宝くじ
    
4.損害保険について         5.予想外の贈与税が…        6.贈与税法って、無いの??
    7.                 8.                 9.
    10.                 11.                 12.
    13.                 14.                 15.

☆ 法人税関係

    1.法人にしたら、メリットがあるの? 2.                 3.
    4.                 5.                 6.
    7.                 8.                 9.
    10.                 11.                 12.
    13.                 14.                 15.

☆ その他

    1.節税ってなに?          2.消費税を取る小さい店が…     3.
    4.                 5.                 6.
    7.                 8.                 9.
    10.                 11.                 12.
    13.                 14.                 15.

 

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☆ 所得税関係

 

1.住宅取得控除

:住宅取得控除は、平成11年分から大きく変わったと聞きましたが、どう変わったのですか?
 また、住宅取得控除の対象になる借入金は、建物に対応する部分のみで、土地に対応する部分は対象外だと聞きました。
 ところで、新築後8年の中古のマンションを購入したのですが、契約書などを見ても、建物部分の金額が明らかではありません。
 この様な場合、建物部分の金額はいくらにすると良いのですか?

:経済回復策の一環として政策的配慮から、平成11・12年の両年の住宅取得控除は、大きく改訂されました。
 次にその概要を示します。

  ┌──────────────┬──────────────┬──────────────┐
  │ 居住年が平成9年又は10年 │ 居住年が平成11年又は12年 │   居住年が平成13年   │
  ├────────┬─────┼────────┬─────┼────────┬─────┤
  │ 控除される期間 │ 6年間 │ 控除される期間 │ 15年間 │ 控除される期間 │ 6年間 │
  ├─┬──────┼─────┼─┬──────┼─────┼─┬──────┼─────┤
  │ │住宅借入金等│     │ │住宅借入金等│     │ │住宅借入金等│     │
  │控│の年末残高 │     │控│の年末残高 │     │控│の年末残高 │     │
  │ │      │     │ │      │     │ │      │     │
  │ │〜 1,000万円│1〜3年目│ │〜 5,000万円│1〜6年目│ │〜 1,000万円│全期間  │
  │ │      │   2.0%│ │      │   1.0%│ │      │   1.0%│
  │除│      │4〜6年目│除│      │7〜11年目│除│〜 2,000万円│全期間  │
  │ │      │   1.0%│ │      │  0.75%│ │      │   1.0%│
  │ │〜 2,000万円│全期間  │ │      │12〜15年目│ │〜 3,000万円│全期間  │
  │ │      │   1.0%│ │      │   0.5%│ │      │   0.5%│
  │率│〜 3,000万円│全期間  │率│      │     │率│      │     │
  │ │      │   0.5%│ │      │     │ │      │     │
  ├─┴──────┼─────┼─┴──────┼─────┼─┴──────┼─────┤
  │        │     │        │1〜6年目│        │     │
  │        │1〜3年目│        │  50万円│        │     │
  │各控除年の   │  35万円│各控除年の   │7〜11年目│各控除年の   │1〜6年目│
  │最大控除額   │4〜6年目│最大控除額   │ 37.5万円│最大控除額   │  25万円│
  │        │  25万円│        │12〜15年目│        │     │
  │        │     │        │  25万円│        │     │
  ├────────┼─────┼────────┼─────┼────────┼─────┤
  │控除期間を通じた│     │控除期間を通じた│     │控除期間を通じた│     │
  │最大控除額の合計│  180万円│最大控除額の合計│ 587.5万円│最大控除額の合計│  150万円│
  └────────┴─────┴────────┴─────┴────────┴─────┘
 この表でも分かる通り、控除期間は6年から15年に大幅に延長されました。
 また、借入金残高も、5,000万円まで対象になることになりました。
 これにより、最大控除可能額は 180万円から587.5万円と、400万円以上増加しました。

 それでは次に、土地部分の金額が分からない場合について説明します。
 まず、そのマンションの売買契約書や領収書をご覧下さい。
 もし、そこに、消費税の金額が載っていれば、消費税額から建物部分の金額を逆算できます。
 土地部分は、消費税の非課税取引であり、従って消費税は建物にのみ課せられているはずだからです。
 仮に…  売買総額 15,500,000円 (内、消費税額は500,000円)
 となっていたとしましょう。
 すると、建物部分は……500,000円÷0.05=10,000,000円、別に消費税が500,000円
 差引土地部分は…………15,500,000円−10,000,000円−500,000円=5,000,000円
 このようになります。

 次に、契約書等にそのような記載がない場合は、どうすればよいのでしょうか。
 この様な場合のために、簡便計算が用意されています。

  【土地・建物一括取得の区分計算の簡便計算】
  ┌───────────────┬──────┬───────────────────────────┐
  │               │      │  既      存      住      宅   │
  │               │      ├──────┬──────┬──────┬──────┤
  │  区         分  │ 新築住宅 │建築後の経過│建築後の経過│建築後の経過│建築後の経過│
  │               │      │期間が5年 │期間が5年超│期間が10年超│期間が15年超│
  │               │      │以内    │10年以内  │15年以内  │20年以内  │
  ├───────┬───────┼──────┼──────┼──────┼──────┼──────┤
  │       │地上階数4以上│  70/100 │  60/100 │  50/100 │  40/100 │  30/100 │
  │1.耐火建築物├───────┼──────┼──────┼──────┼──────┼──────┤
  │       │地上階数3以下│  60/100 │  50/100 │  40/100 │  30/100 │  30/100 │
  ├───────┴───────┼──────┼──────┼──────┼──────┼──────┤
  │2.木造住宅等(1.以外)  │  50/100 │  40/100 │  30/100 │  20/100 │   −  │
  └───────────────┴──────┴──────┴──────┴──────┴──────┘
 ご質問の場合、仮に5階建てのマンションで、金額が2,000万円だとすると、建物部分の金額は一体いくらになるのでしょうか。
 この表にあてはめますと…
    20,000,000円×50/100=10,000,000円
 建物部分の金額は、10,000,000円。
 このようになります。

 ただし、平成11年以降に居住された家屋については、この度の税制改正により、住宅と共に取得した土地部分に対する借入金についても、住宅取得控除の対象とされることになりました。
 平成10年以前に居住した場合は、従来通りとなっています。
 ご注意下さい。

 

 

2.医療費控除の対象

:医療費控除について、その対象になるもの・ならないものを教えて下さい。

:医療費控除も、サラリーマン等の還付申告では、住宅取得控除と並んでポピュラーなモノの一つです。
 ここではその内容について、少し詳しく見ていきましょう。
 さて、医療費控除の対象となる医療費の種類ですが、まず原則を挙げてみます。
 1.医師又は歯科医師による診療又は治療
 2.治療又は療養に必要な医薬品の購入
 3.病院、診療所又は助産所へ収容されるための人的役務の提供
 4.あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律第3条の2(名簿)に規定する施術者による施術
   柔道整復師法第2条1項(定義)に規定する柔道整復師による施術。
 5.保健婦、看護婦又は准看護婦による療養上の世話
 6.助産婦による分娩の介助

 これだけを読んで、すべてが理解できればなんら問題は無いのですが…。(^^;)
 それでは、ややこしい点に絞って書いてみます。

自由診療
 医師・歯科医師による通常の診療は、社会保険診療であろうが、自由診療であろうが、医療費控除の対象となります。
 医師・歯科医師による診療・治療であることに違いはないからです。

売薬の購入
 風邪を引いたために薬局で市販の風邪薬を購入した場合なども、風邪を治療のために必要な医薬品ですから、もちろん医療費控除の対象になります。
 それでは、併せてビタミン剤を購入した場合はどうでしょうか。
 ビタミン剤は、たとえ風邪が速く治ることを願って購入したとしても、治療等に必要な医薬品とは言い切れない(購入者が医師ではないので、その判断はできない)ので、医療費控除の対象外となります。
 逆に、そのビタミン剤が、医師による風邪の治療の一環として処方されたものであるならば、医療費控除の対象になります。

民間療法
 癌などに罹った場合に、民間療法として“鮫の軟骨”とか“プロポリス”などを購入する場合もあると聞きます。
 これらは、たとえ効果があったとしても健康食品の一種である以上、医療費控除の対象にはなりません。
 医薬品の購入には該当しないからです。
 他の民間療法も、扱いは同様です。

歯列矯正費用
 子供の歯列矯正は、あご等の成長を阻害しないように必要な治療であると認められ、医療費控除の対象になります。
 これに対し、成長した大人が美容目的で行った歯列矯正は、医療費控除の対象外となります。

不妊治療等
 不妊治療・人工授精が、医師の診断に基づく不妊症の治療の一環として行われるのであれば、医療費控除の対象になります。

タクシー代
 無制限にOKという訳ではありません。
 電車・バスなどを使えない理由があれば、タクシー代も医療費控除の対象となります。
 例えば、足を骨折した人が、電車・バスなどに乗降できないため、タクシーを使って通院するなどはある意味当然ですから、医療費控除の対象になります。

通院用のガソリン代
 通院に使った、自家用車のガソリン代はどうでしょうか。
 タクシーがOKなのですから、何となく認められそうな気もするのですが…?
 しかし法律上、医療費控除に認められているのが「人的役務の提供」に限られているため、やはり認められません。
 それでは、近所の人に、車で送り迎えをしてもらった場合はどうでしょうか。
 このような場合、車で送迎してもらった、という役務に対する対価としての支払いなら、医療費控除の対象になるでしょう。
 1回いくらの様に、金額を明確に定めておく方が無難です。
 逆に、「今までありがとう」と言う形で幾ばくかのお金を渡したとすると、これなどは単なる謝礼ですから、医療費控除の対象にはなりません。

電車・バス代
 通院に要した電車代やバス代が医療費控除の対象となることは、かなり知れ渡っていると思います。
 それでは、出産のために妻が実家へ帰るための帰省費用は、医療費控除の対象になるのでしょうか?
 実家へは、あくまで個人の都合で実家へ帰るのですから、医療費控除の対象にはなりません。
 現在住んでいるところの産院・病院等でも、何ら問題なく出産はできるからです。

カイロプラティック
 カイロプラティックで、マッサージ師や柔道整復師などの有資格者が行っているものであれば、医療費控除の対象になります。
 ただし、無資格者が行っているカイロプラティックは、医療費控除の対象にはなりません。
 いくら研修・研究を積んだ、優秀なカイロプラティックであったとしても、残念ですが無資格者である以上、現行の法律では医療費控除の対象外となります。

フィットネスクラブ
 本来、フィットネスクラブなどは、本人の健康増進のために支出するもので、医療費控除の対象外になります。
 しかし、医師が治療を目的として運動療法を行わせる場合で、一定の証明があるときは、そのフィットネスクラブの料金は、医療費控除の対象になります。

差額ベッド
 差額ベッド代の内、通常必要なモノは、治療に必要なものですから医療費控除の対象になります。
 ただし、来客が多いため同室患者に迷惑をかける等の理由で個室を選んだ場合は、その差額ベッド代は治療の目的では無く、自己都合ですから、医療費控除の対象にはなりません。
 先日テレビで「治療に必要な個室は、入院患者が負担するものではない。」との内容の発言がありました。
 そうすると、差額ベッドは全て自己都合であるということになってしまいます。
 しかし、事の本質はともかく、現状では治療目的の差額ベッドも、入院患者が負担していますから、医療費控除の対象として問題ありません。

医師・看護婦等に対する謝礼
 謝礼などは、あくまでお礼に過ぎないので、治療の対価には該当しません。
 従って、これらは医療費控除の対象にはなりません。

おむつ代
 おむつは、本来医療費控除の対象にはなりません。
 ただし、医師が一定の証明書を出し、領収書に成人用おむつである旨の記載がある場合は、医療費控除の対象になります。
 寝たきり老人(最近では、寝かせきり老人という認識が広がっているようですが)への配慮ですね。
 赤ちゃんのおむつ代は、当然ですが医療費控除の対象にはなりません。

出産費用
 出産費用も、医療費控除の対象になります。
 このとき、出産育児一時金は医療費を補てんする保険金等として医療費から差引計算しますが、出産手当金は医療費を補てんする保険金等には該当しないので、差引計算する必要はありません。
 勘違いしやすいですから、お気をつけ下さい。

中絶費用
 優生保護法に基づいて行われる中絶は、医療費控除の対象になります。
 逆に、優生保護法の規定に基づかない中絶は、医療費控除の対象外になります。
 がしかし、優生保護法に基づかない中絶は無いハズなので、結局、中絶はすべて医療費控除の対象になることになります。

 

 

3.パート・アルバイト収入

:私はパート(アルバイトを含みます)をして105万円の収入がありました。
 その際の税金について、注意する点があれば教えて下さい。

:パート・アルバイトによる収入は給与所得とされますので、その収入に対しては給与所得控除が適用されます。
 つまり、そのパート収入の金額が65万円までの場合は、所得金額はゼロとなります。
 また、基礎控除も各人に38万円ありますので、収入金額が103万円(65万円+38万円)までの場合は、所得税は一切課税されないことになります。
 あなたのパート収入は105万円とのことですので、通常その勤務先において年末調整を受けて、生命保険料控除など他の控除がなければ、2,000円(注)の所得税が徴収されて、あなた自身の課税関係は終了します。
  注:(1,050,000円−650,000円−380,000円)×10%=2,000円
 次に、あなたが他の方の控除対象配偶者又は扶養家族になっていた場合を考えてみます。
 まず、扶養家族になるかどうかの判定は、あなたの給料の多寡により、扶養家族になったり、扶養家族にならなかったりします。
 あなたの場合、パート収入は105万円ですから、給与所得控除を差引すると、40万円の所得があったことになります。
 扶養家族になるためには、所得金額が38万円以下でなければならないので、この例の場合は、配偶者控除又は扶養親族控除からは外れることになります。
 また、配偶者特別控除については別に計算しますので、105万円のパート収入に場合は、36万円の配偶者特別控除が認められることになります。
 この例の場合ご主人の税額の増加額を、パート収入が65万円であった場合と比較すると、80,000円(注)となります。
  注:(38万円+(38万円−36万円))×20%=80,000円
    この計算は、税率が20%とした場合で、以下この項において同じとします。

 配偶者特別控除を設定したため、控除金額は穏やかに推移することになり、かつてのように僅かな金額で、扶養控除の金額が大きく変動するということはなくなりました。
 配偶者控除と、配偶者特別控除の関係はなかなかややこしいので、分かり易いように一覧表にしてみました。
  ┌─────┬────────────┬──────────┬─────┬─────┬─────┐
  │ 配偶者の │            │ 左記給料等の金額 │ 配偶者 │     │     │
  │ 区  分 │  給与等の収入金額  │ の、合計所得金額 │ 特別控除 │配偶者控除│合 計 額│
  ├─────┼────────────┼──────────┼─────┼─────┼─────┤
  │     │     0円〜 699,999円│    0円〜 49,999円│ 380,000円│ 380,000円│ 760,000円│
  │     │ 700,000 〜 749,999 │ 50,000 〜 99,999 │ 330,000 │ 380,000 │ 710,000 │
  │配偶者控除│ 750,000 〜 799,999 │100,000 〜149,999 │ 280,000 │ 380,000 │ 660,000 │
  │     │ 800,000 〜 849,999 │150,000 〜199,999 │ 230,000 │ 380,000 │ 610,000 │
  │ の対象に │ 850,000 〜 899,999 │200,000 〜249,999 │ 180,000 │ 380,000 │ 560,000 │
  │     │ 900,000 〜 949,999 │250,000 〜299,999 │ 130,000 │ 380,000 │ 510,000 │
  │なる配偶者│ 950,000 〜 999,999 │300,000 〜349,999 │ 80,000 │ 380,000 │ 460,000 │
  │     │1,000,000 〜1,029,999 │350,000 〜379,999 │ 30,000 │ 380,000 │ 410,000 │
  │     │1,030,000 〜1,030,000 │380,000       │    0 │ 380,000 │ 380,000 │
  ├─────┼────────────┼──────────┼─────┼─────┼─────┤
  │     │1,030,001円〜1,049,999円│380,001円〜399,999円│ 380,000円│    0円│ 380,000円│
  │配偶者控除│1,050,000円〜1,099,999 │400,000円〜449,999 │ 360,000 │    0 │ 360,000 │
  │     │1,100,000円〜1,149,999 │450,000円〜499,999 │ 310,000 │    0 │ 310,000 │
  │ の対象に │1,150,000円〜1,199,999 │500,000円〜549,999 │ 260,000 │    0 │ 260,000 │
  │     │1,200,000円〜1,249,999 │550,000円〜599,999 │ 210,000 │    0 │ 210,000 │
  │ ならない │1,250,000円〜1,299,999 │600,000円〜649,999 │ 160,000 │    0 │ 160,000 │
  │     │1,300,000円〜1,349,999 │650,000円〜699,999 │ 110,000 │    0 │ 110,000 │
  │ 配偶者 │1,350,000円〜1,399,999 │700,000円〜749,999 │ 60,000 │    0 │ 60,000 │
  │     │1,400,000円〜1,409,999 │750,000円〜759,999 │ 30,000 │    0 │ 30,000 │
  │     │1,410,000円〜      │760,000円〜     │    0 │    0 │    0 │
  └─────┴────────────┴──────────┴─────┴─────┴─────┘

 さて、以上の話は、婚姻届を出している配偶者の場合です。
 注意いただきたいのが、扶養親族となっているお子さんがアルバイトをしている場合です。
 もし仮に、そのお子さんのアルバイト収入が103万円を超えますと、一発で扶養親族から外れますので、お父さん側で増加する税額は、76,000円(注)となります。
  注:380,000円×20%=76,000円
(税率が20%とした場合)
 更に、そのお子さんが特定扶養親族に該当している場合は、136,000円(注)もの税額が増えますので、お子さんの収入状況は、把握しておかれる方がよいと思います。
  注:680,000円×20%=136,000円
 更に、アルバイト収入が103万円を超えるお子さんが、二人いたとしたら…。(^^;)
 計算はやめておきますが、こんなに増えては冗談では済みませんものね。
 増える税金、せめて半分はお子さんに負担してもらいますか?(笑)

 

 

4.原稿料収入

:サラリーマンですが、某出版社の記事を執筆して250,000円の原稿料をもらいました。
 この執筆に当たり、参考資料など60,000円の必要経費がかかっています。
 源泉税が10%差し引かれて手取りは225,000円でしたが、申告は必要なのですか?
 年末調整はもう済んでいるのですが…。

:サラリーマンが受け取っている給料が一箇所からのみ受けていて、その給料について年末調整を受けている場合、原稿料の所得金額(収入額から必要経費を差し引いた金額)が200,000円以下であるときは、確定申告をする必要はありません。
 あなたの場合、250,000円から60,000円を差し引いた190,000円が所得ですから、確定申告をする必要は無いことになります。
 従って、放っておいて大丈夫です。
 さて、ここで言う“申告する必要がない”とは、“申告してはいけない”と言う意味ではありません。
 差し引かれている源泉税、25,000円を還付してもらうこともできます。
 それでは、還付金額を算出してみましょう。
 仮に税率が10%の場合…
   1.(250,000円−60,000円)×10%=19,000円 ………申告により増加する所得税額
   2.25,000円                 ………源泉徴収された所得税額
   3.1.−2.= △ 6,000円        ………差引還付税額
 これにより、差引6,000円の所得税が還付されることになります。
 また、住宅取得控除や扶養控除などが大きい場合、年末調整の結果、所得税額がゼロになっていることもあります。
 このような場合、25,000円全額が還付されることもありましょう。
 ただし、地方税も課税されますので、良く見極めた上での申告が必要となります。
 なお地方税には、所得が200,000円以下の申告不要などの制度はありませんので、この点についても注意が必要です。
 この申告をしようとするときは、原稿料を支出した出版社などから送付される源泉徴収票・給料の支給者から交付される源泉徴収票が必要ですので、大切に保管しておきましょう。
 もちろん、必要経費の領収書も必要ですね。
 ただし、医療費控除や住宅取得控除を受けるためなどで確定申告をするときは、たとえ原稿料の所得が200,000円以下であっても、すべて含めて申告しなければなりません。
 この規定は、200,000円以下の所得を非課税とするモノではなく、年末調整で既に課税関係が終了している人に対して、少額の所得に対する手続きの簡便化のために認められているモノだからです。
 この点については、注意が必要ですね。
 さて、これらの原稿料にかかる所得は、所得税法上、雑所得として計算することになります。
 どう考えても事業的規模とは言えませんので、事業所得には該当しません。
 雑所得は、仮に赤字が出た(収入金額より必要経費の方が多かった)場合でも、その赤字を他の所得(あなたの場合、給与所得ですが)から差し引くことは出来ませんので、ご注意下さい。

 

 

5.医療費控除を受ける方が…得?

:私はサラリーマンをしています。
 数年前に購入した住宅取得控除があったため、昨年末の年末調整の結果、所得税額はゼロになりました。
 ところで、昨年中に病気のために私が入院したため、支払った医療費の額も300,000円ありました。
 でも、どうせ所得税額はゼロなのですから、医療費控除として確定申告をする意味はないんですよね?
 それとも、確定申告をする方が良いんでしょうか?

:さてさて、このように所得税額がゼロになっている場合、通常申告しようという方は余りいないように思えます。
 申告しても、所得税額の還付がないからです。
 それでは、本当に申告しても同じなのでしょうか?
 全く得にはならないのでしょうか?
 簡単な設例で検証してみたいと思います。

 例: 1.給与総額    5,000,000円
    2.所得控除の金額             所得税での金額     住民税での金額
      (1)社会保険料               450,000円       450,000円
      (2)生命保険料控除              50,000円        35,000円
      (3)基礎控除                380,000円       330,000円
      (4)配偶者控除               380,000円       330,000円
      (5)配偶者特別控除             380,000円       330,000円
      (6)扶養控除(2人)            760,000円       660,000円
      (7)医療費控除の額             200,000円       200,000円
      (8)(1)〜(7)の合計          (2,600,000円)    (2,335,000円)
    3.税額控除の金額
    4.住宅取得控除                100,000円          0円

 さて、それでは、とりあえず所得税額を計算してみましょう。
    1.給与所得控除後の金額   :3,460,000円
    2.控除額の合計金額     :2,600,000円
    3.差引所得金額(1.−2.) : 860,000円
    4.差引所得に対する税額   :  86,000円
    5.住宅取得控除       : 100,000円
    6.差引納付税額(4.−5.) :    0円(マイナスの場合は、ゼロ)

 以上の通り、所得税額はゼロ円となります。
 年末調整で所得税額がゼロになったのですから、当然といえば当然のことなのですが…。
 従って、医療費控除(300,00円−100,000円=200,000円)を申告してもしなくても、何ら変わりはありません。
 ところが、所得に対する税金というのは所得税だけではないんですね。
 租税の世界には、住民税(都道府県民税、市町村民税)というものも存在します。
 実は住民税には、住宅取得控除という規定は存在しないのです。
 そのため所得税額がゼロだとしても、住民税額はゼロになるとは限らないのです。
 しかし、住民税にも医療費控除の規定は存在します。
 ですから住民税のレベルまで考慮に入れますと、たとえ住宅取得控除のために所得税額がゼロだとしても、医療費控除は申告する方が得だ、ということになります。
 これも、上記の設例で計算してみましょう。
 なお、住民税の税率などは自治体によって異なる場合があるため、標準税率で計算を行っています。

   住民税の税率表(必要部分を抜粋)  市町村民税  道府県民税
    均等割  人口50万人以上       3,000円    1,000円
    所得割  200万円以下部分        3%      2%

                     医療費控除を申告した場合    医療費控除を申告しなかった場合
    1.給与所得控除後の金額  :        3,460,000円             3,460,000円
    2.控除額の合計金額    :        2,335,000円             2,135,000円
    3.差引所得金額(1.−2.):        1,125,000円             1,325,000円
    4.差引所得に対する税額  :          60,200円               70,200円

 この計算によりますと、医療費控除を申告することにより、住民税額は10,000円(70,200円−60,200円)有利になります。
 出産などにより、多額の医療費が算出される場合もあるでしょう。
 こういう例は、いわゆるニューファミリーに多い例だと思いますので、申告の際にはお気を付けになられると良いと思います。

 

 

6.扶養親族の変更

:子供を私の扶養家族として、年末調整を受けていました。
 しかしその後、その子供を妻の扶養家族とする方が、有利になることに気づきました。
 ところが妻も年末調整が済んでしまっているのですが、なにか良い方法はないですか?

:その年の翌年の1月末までなら、それぞれの勤務先に“扶養親族に異動があった”旨を申し出て、年末調整の再調整をしてもらうように申し出ることが出来ます。
 この場合、必ず双方の勤務先に申し出て下さい。
 ただし、1月末までとはなっていますが、実際の手続きには最低でも数日かかるので、1月の末日に申し出ても年末調整の再調整は、事実上不可能だとは思います。
 第一、計算のすべてがやり直しになるので、経理担当者からは思い切り嫌がられます。(^^;)
 イヤミの一つや二つでは済まないかと…。
 怒鳴られることを覚悟の上で、申し出ましょう。(笑)
 それでは、会社から年末調整の再調整を拒否された場合や、2月以降になってから、この事に初めて気づいた場合はどうすればよいのでしょうか?
 サラリーマンの方が年末調整を終えてしまうと、もう変更できないと思ってられる方が結構いらっしゃいます。
 年末調整は、あくまで給料の支給者が行う仮確定(と言う表現が正しいかどうか…(^^;))ですから、その年末調整が真実と違うときは、当然確定申告をしなければなりませんし、また、確定申告をすることが出来ます。
 あなたの場合、奥さんの方に扶養家族を入れて所得税額を計算したいのですから、奥さんが確定申告をすることにより、子供を奥さんの扶養家族に入れることが出来ます。
 これにより、奥さんには税金が還付されて、万々歳と言うことになります。
 さて、ここで注意しなければならないのは、あなたの扶養家族にしていたお子さんを奥さんの方に入れたのですから、当然お子さんを、あなたの扶養家族から外した形で確定申告をして、あなたが税金を払わなければならないと言うことです。
 この申告を忘れると、お子さんの扶養控除を二重取りしたことになりますので、充分ご注意下さい。
 結果として、脱税をしていることと同様になってしまいますからね。
 申告には、それぞれの勤務先から受け取った、源泉徴収票が必要になりますので、準備しておきましょう。
 ところで来年以降も、お子さんを奥さんの扶養家族に入れておく方が有利だと思われるときは、奥さんの勤務先に提出する「扶養控除等申告書」にお子さんの名前を書いておき、あなたの勤務先に提出する「扶養控除等申告書」からはお子さんの名前を消して、それぞれの勤務先に届けておく方がよいでしょう。
 でないと、来年また、確定申告をしなければならなくなります。
 ご主人の方で住宅取得控除をたくさん引かれているような場合、奥さんに税額があれば、奥さんの方に扶養家族を廻した方が有利になる場合も多いですから、一度試算されると良いでしょう。
 希に、会社の経理などから「扶養家族は、ご主人の方にしか入れることは出来ない。」などと言われる例があると聞きますが、これらは明らかに間違っていますので、正々堂々と提出しましょう。
 経理担当者が、単に前例に従ってるだけ、あるいは、自社の慣習に従っているだけ、という場合が多いようです。

 

 

7.内職収入

:私は主婦ですが、今年は内職をして50万円の収入があったのですが、内職による収入は給料ではないと聞きました。
 必要経費はほとんどありませんでした。
 そうすると、もし税率が10%だとすると、5万円もの税金を納めなければならないのですか?
 だとすると、私の所得は38万円を超えるので、配偶者控除も受けられないのですか?
 もし給料だとしたら、65万円までの収入ならその所得は0円で、税金は掛からないし、配偶者控除も受けられるのに、どう考えても不公平だと思うのですが。

:家内労働(内職)による収入は、原則として給与所得とはなりません。
 その内職の規模により、雑所得又は事業所得として計算することになります。
 内職とはいえ、パートさんを雇い、その仕事だけで生活しているとなると、事業所得としても問題ないでしょう。
 一般的には、ごく小規模に行うことが多いでしょうから、雑所得となる場合が多いのでしょうが…。
 内職は、メーカーなどのからの委託により、一般にその委託先から材料などの提供を受け、自宅等で縫製や加工を行ない、これによって出来高に応じた工賃をもらうという形態であるからです。
 つまり内職の作業は、委託先の指揮監督をうけずに自己の判断でその内職を行える、というところがその理由とするところです。
 したがって、内職をするにあたって現に必要な必要経費(作業場所の電気代、納品費用など)があれば、所得計算の上では当然必要経費とされます。
 すなわち、内職をした場合の所得計算は、実額で計算をするのが建前となっています。
 ところが、内職に従事していても実際はそんなにもたくさん必要経費があるわけではありません。
 この内職だけで生活ができるくらいの規模で内職をしているのならともかく、家計の足しにと細々と内職を続けているのでしょうから、そんなにたくさん必要経費が必要となると、内職をしない方がマシという話にもなりかねません。
 せいぜい、若干の電気代、来客用のお茶代などが必要なくらいでしょうか。
 片や65万円までの給与収入なら給与所得はゼロになりますから、ここに給与所得者との間に不公平感があるわけです。
 会社へ行って作業をするか、自宅で作業をするかだけの違いじゃないか、というわけです。
 しかし実際は、会社へ行けば会社の指揮監督下に入って作業をするのですし、自宅では自己の管理下で作業をするのですから、場所だけの違いというわけでもないのですが…。
 自宅だと、休憩を取るのも自由ですからね。(^^;)
 でも、心配は要りません。
 内職、集金人、検針員などについては最低65万円の必要経費を見ることが出来るので、給与所得者と扱いは同等になります。
 これは、63年(当時は57万円)の租税特別措置法で措置されたものです。
 従って、あなたの場合も内職による収入は50万円ですから、その所得は0円になります。
 更に、所得金額がゼロであるため、配偶者控除・配偶者特別控除の規定の適用も受けることが出来ます。
 安心していただいて結構です。

 

 

8.年末調整

:年末調整って何をするんですか?
  税金が返ってきた年もあったし、足りないと言われて徴収された年もあったんですけど…。

:給料を貰っている方は、毎月の給料から源泉税を徴収されていることはご存じの通りです。
  ところで、この源泉税はあくまで年間の所得税額の概算額であり、その一年間の所得税額と一致することはまずありません。
  そこで、この概算額をその年分の確定所得税額と一致させるために行うのが年末調整です。

  年末調整では、次のような事項について計算を行います。
     基礎控除・配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除
     障害者控除・老年者控除・寡夫寡婦控除・勤労学生控除
     生命保険料控除・損害保険料控除・社会保険料控除・小規模企業共済掛金等控除
     住宅取得特別控除(2年目以降)
  従って、医療費控除などは年末調整では行わず、確定申告で行うことになります。
  さて、それではA氏の設例で計算を行ってみたいと思います。

  例:  一年間の給料・賞与の金額         4,800,000円
      一年間に徴収された源泉税額         100,000円
      一年間に納付した社会保険料の金額      350,000円
      一年間に支払った生命保険料の額        80,000円
      住宅取得等特別控除の額            70,000円
      扶養家族
        妻 (所得無し)
        長男(アルバイトで1,050,000円・満19歳の大学生)
        長女(所得無し・満14歳の中学生)

  まず、A氏は年間4,800,000円の給料を得ていますが、この所得が幾らになるかを調べます。
  これは、給料について認められている必要経費(あるんですねぇ〜。(笑))を控除した金額になります。
  そこで『給与所得控除後の給与等の金額の表』で4,800,000円を調べてみますと…、3,300,000円になります。
  つまりこの場合、1,500,000円(4,800,000円-3,300,000円)の必要経費が認められていることになります。
  さて、こうして計算した金額から、各種控除額を差し引いて、課税所得を計算します。
      基礎控除      380,000円
      配偶者控除     380,000円
      配偶者特別控除   380,000円
      扶養控除      380,000円  (長女の分・長男は所得が380,000円を越えているため該当しない)
      年少扶養親族    100,000円  (長女の分・平成11年分の所得税より創設)
      社会保険料控除   350,000円
      生命保険料控除    45,000円  (80,000円÷4+25,000円)
      控除額合計    2,015,000円

  差引課税所得の金額
      3,300,000円−2,015,000円=1,285,000円(千円未満切捨)

  こうして算出した課税所得金額に税率を乗じて、その年分の所得税額を算出します。
  この税率は、課税所得が大きくなるほど高率になっています(超過累進税率)。
      1,285,000円×10%= 128,500円(3,300,000円以下なので10%)

  平成11年は定率減税(20%)があるため、この減税額を差し引いた税額を計算します。
       128,500円×20%= 25,700円
       128,500円−25,700円=102,800円

  次に、この所得税額から、税額控除である住宅取得等特別控除を控除します。
       102,800円−70,000円=32,800円

  この金額が、A氏のその年分の所得税額となるわけです。
  しかし、どうでしょうか。
  A氏は既に毎月の給料や賞与から 100,000円の源泉税が徴収されてしまっています。
  すなわち、税金を支払い過ぎになっているのです。
  この支払い過ぎの税額は、年末調整で還付されることになります。
       100,000円−32,800円=67,200円
  つまりA氏は年末調整により 67,200円が、還付されることになるわけです。

  もしA氏の源泉徴収税額が、20,000円だったとすると、12,800円(32,800円−20,000円)の不足となります。
  つまりこの場合は、年末調整により 12,800円を徴収されることになるわけです。

  それではもし、A氏が他からも給料を取得しているときは、どうなるのでしょうか?
  双方の給料について、年末調整を受けることが出来るのでしょうか?
  実はこの場合、二つの給料を併せて確定申告により所得税額を確定させることになります。
  従って、確定申告をしなければならないことになります。
  年末調整は、いずれか一方の主たる給与のみでしか行うことはできないからです。
  何カ所からも給料を取得している場合も、考え方は同じです。

 

 

 

☆ 相続税関係

 

1.相続税額の算出

:相続税額の算出方法について、その概要を簡単に教えて下さい。

:正直に申しまして、簡単に説明するのはなかなか難しいです。
 あまり簡単に書きすぎると訳が分からないし、詳細に書きすぎても訳が分からない…。(^^;)
 すべての内容を盛り込むことは出来ませんが、簡単な事例を設定してその概略を説明してみます。
 まず相続税は、他の税法とは違い、一事案について納税者が一度に複数生じることがあるのが一般的です。
 このため、他の税法ではなかなか見られない、按分割合などという概念を持ちだしています。
 一旦相続税の総額を出して、その総額を按分しようという訳です。
 それでは、事例の前提として次の条件を設定したいと思います。

  1.相続財産
    A.財産
      被相続人が居住していた土地   40,000,000円(250m2)
      被相続人が居住していた家屋   5,000,000円(180m2)
      山林              20,000,000円(180ha)
      別荘              8,000,000円(120m2)
      A銀行定期預金         50,000,000円
      A銀行定期預金利息       1,000,000円(死亡日までの利息で、源泉税引後1,000,000円)
      B社株式            12,000,000円(上場株、20,000株)
      その他の動産など        10,000,000円(自動車、書画・骨董品等)
      生命保険            30,000,000円
    B.負債
      借入金             8,000,000円
      葬式費用            3,000,000円

  2.親族図
    父(死亡)━━┳━━母(死亡)
           ┃
         被相続人━━┳━━配偶者(1/2)
               ┃
         ┏━━━━━╋━━━━━┓
         長男    二男(16歳) 長女
         (1/6)    (1/6)    (1/6)

  3.各人の相続による取得
     配偶者 土地          40,000,000円
         小規模宅地減額    △25,600,000円
         家屋           5,000,000円
         山林          20,000,000円
         定期預金        20,000,000円
         未収入金(定期預金利息)  1,000,000円
         生命保険        30,000,000円
         生命保険の非課税   △20,000,000円
         葬式費用       △ 3,000,000円  差引小計 67,400,000円
     長男  別荘           8,000,000円
         定期預金        20,000,000円
         借入金        △ 8,000,000円  差引小計 20,000,000円
     二男  B社株式        12,000,000円
         定期預金         5,000,000円  小  計 17,000,000円
     長女  その他の動産      10,000,000円
         定期預金         5,000,000円  小  計 15,000,000円

 さてそれでは、この条件に基づいて相続税の計算をしてみましょう。
 まず、各人が取得した課税価額の合計額を計算します。
   ┌───────┬───────┬───────┬───────┬───────┬───────┐
   │       │ 配 偶 者 │ 長   男 │ 二   男 │ 長   女 │ 合   計 │
   ├───────┼───────┼───────┼───────┼───────┼───────┤
   │土     地│  40,000,000│       │       │       │  40,000,000│
   │小規模宅地減額│ △25,600,000│       │       │       │ △25,600,000│
   │家     屋│   5,000,000│       │       │       │   5,000,000│
   │山     林│  20,000,000│       │       │       │  20,000,000│
   │定 期 預 金│  20,000,000│  20,000,000│   5,000,000│   5,000,000│  50,000,000│
   │未収入金(利息)│   1,000,000│       │       │       │   1,000,000│
   │別     荘│       │   8,000,000│       │       │   8,000,000│
   │B 社 株 式│       │       │  12,000,000│       │  12,000,000│
   │その他の動産 │       │       │       │  10,000,000│  10,000,000│
   │生 命 保 険│  30,000,000│       │       │       │  30,000,000│
   │生命保険非課税│ △20,000,000│       │       │       │ △20,000,000│
   │債 務 控 除│ △ 3,000,000│ △ 8,000,000│       │       │ △11,000,000│
   ├───────┼───────┼───────┼───────┼───────┼───────┤
   │合     計│  67,400,000│  20,000,000│  17,000,000│  15,000,000│ 
119,400,000
   └───────┴───────┴───────┴───────┴───────┴───────┘
      注1:小規模宅地の減額計算は、次の通り。
         配偶者が取得した場合、200m2までの部分は、80%が相続税額の計算上から控除されます。
         40,000,000円×80%×(200m2÷250m2)=25,600,000円
      注2:生命保険料の非課税金額の計算は、500万円×4人(法定相続人の数)=20,000,000円となります。
         これは、退職金についても同様の計算を行います。
 これにより、課税価額は119,400,000円となりました。
 課税価額とはつまり、各人が取得した純資産の合計額ですね。

 次に、この金額に基づいて、相続税の総額を計算します。
 この計算は、全ての財産を、法定相続人が法定相続分通りに相続したものとして、一旦計算します。
    課税価額……………119,400,000円
    基礎控除額………… 50,000,000円+10,000,000円×4人(法定相続人の数)=90,000,000円
    差引金額……………119,400,000円−90,000,000円=29,400,000円
    各人の相続税額
     配偶者……………29,400,000円×1/2=14,700,000円
             14,700,000円×15%−400,000円=1,805,000円
     長 男……………29,400,000円×1/6= 4,900,000円
              4,900,000円×10%−   0円= 490,000円
     二 男……………長男に同じ
     長 女……………長男に同じ
    相続税の総額………1,805,000円+(490,000円×3人)=
3,275,000

 そうそう、相続税の速算表も書いておきましょう。
        ┌──────────────────────┬───────┬────────┐
        │  各相続人の、法定相続分による取得価格  │ 税   率 │ 控  除  額 │
        ├──────────────────────┼───────┼────────┤
        │      0万円超     800万円以下│    10%│     0万円│
        │    800      1,600    │    15 │    40  │
        │  1,600      3,000    │    20 │   120  │
        │  3,000      5,000    │    25 │   270  │
        │  5,000     10,000    │    30 │   520  │
        │ 10,000     20,000    │    40 │ 1,520  │
        │ 20,000     40,000    │    50 │ 3,520  │
        │ 40,000    200,000    │    60 │ 7,520  │
        │200,000               │    70 │27,520  │
        └──────────────────────┴───────┴────────┘

 さて、相続税の総額は、3,275,000円であることが分かりました。
 この金額は、この相続について納付しなければならない相続税額の合計額ということになります。
 最後に、この相続税額の総額を、誰がどれだけ負担するのか按分計算します。
   ┌───────┬───────┬───────┬───────┬───────┬───────┐
   │       │ 配 偶 者 │ 長   男 │ 二   男 │ 長   女 │ 合   計 │
   ├───────┼───────┼───────┼───────┼───────┼───────┤
   │按 分 割 合│    0.5644│    0.1675│    0.1423│    0.1256│       │
   │按分割合の確定│     0.56│     0.17│     0.14│     0.13│     1.00│
   │各人の相続税額│   1,834,000│    556,750│    458,500│    425,750│   3,275,000│
   │配偶者税額軽減│ △ 1,834,000│       │       │       │ △ 1,834,000│
   │未成年者控除 │       │       │  △ 240,000│       │  △ 240,000│
   ├───────┼───────┼───────┼───────┼───────┼───────┤
   │合     計│       0│    556,700│    218,500│    425,700│ 
 1,200,900
   └───────┴───────┴───────┴───────┴───────┴───────┘
      注1:按分割合は、各人の取得資産の合計額を、取得資産の総合計額で割った数です。
         配偶者なら… 67,400,000円÷119,400,000円=0.5644・・・・ となります。
         この数字を、小数点以下2位未満を四捨五入して、小数点2位でそろえます。
      注2:配偶者については、次の特例があります。
         配偶者が取得した相続財産の160,000,000円までの部分に対応する相続税額 又は、
        配偶者の取得した相続財産の内、その配偶者の法定相続分に対応する相続税額については、
        納付する相続税額からは控除されます。
         設例の場合、配偶者の相続した割合は0.5644と、法定相続分(1/2)を越えています。
         しかし、相続財産の金額は67,400,000円と160,000,000円に満たないため、配偶者の税額軽減は
        1,834,000円となり、従って相続税額はゼロとなります。
      注3:未成年者の場合、20歳に達するまで1年につき6万円の未成年者控除があります。
         設例の場合、二男は16歳ですから (20歳−16歳)×60,000円=240,000円 となります。
         また、設例では関係ありませんが、障害者控除というものもあり、基本的な計算方法は同じです。
         適用は70歳まで、年60,000円(特別障害者の場合は120,000円)です。

 とまぁ、このような流れになります。
 これだけのザッと流したような内容では、とてもすべてを説明などできませんが、せめて大まかな計算の流れだけでも分かっていただければ、幸いなのですが…。
 分かっていただけましたでしょうか??(^^;)

 

 

 

☆ 贈与税関係

 

1.住宅取得資金

:住宅取得資金の贈与を受けたいのですが、この特例について教えて下さい。

:住宅取得資金の贈与があった場合の贈与税額の計算の特例の制度についてですね。
 この制度は、父母又は祖父母からの住宅取得資金の贈与があった場合に、年間110万円の贈与税の基礎控除額を5年間分(550万円ですね)を先取りして計算することが出来るものです。
 特例の対象となるのは1,500万円までの金額で、適用できるのは一生に一度限りです。
 それでは、規定の詳しい内容を書いてみたいと思います。
  適用用件  :昭和59年1月1日〜平成13年12月31日までに住宅取得資金の贈与を受けること。
        :受贈者のその年分の合計所得金額が、1,200万円以下であること。
        :その受贈者及び配偶者が、贈与前5年以内において、住宅用家屋を所有していないこと。
        :今までに、この規定の適用を受けたことがないこと。
        :日本に生活の拠点があること。
        :この規定の適用を受ける旨を記載した、贈与税の申告書を提出すること。
  適用対象家屋:新築若しくは建売又は中古家屋で、
        :床面積が50m2以上で、
        :かつその床面積のうち、1/2以上が居住用であること。
        :その住宅取得資金の全額を住宅の取得に充て、その年の翌年3月15日までに居住すること 又は
         同日後遅滞なく居住の用に供することが確実なこと。
  計算方法  :a…住宅取得資金の内、1,500万円までの金額
         b…その年中に贈与を受けた財産の価額の合計額
        :贈与を受けた年分の贈与税額の計算
           A ((a×1/5)+(b−a)−110万円)×贈与税の税率−控除額
           B (b+(a×1/5))−110万円)×贈与税の税率−控除額
           贈与を受けた年分の贈与税額 (A−B)+B×5
        :贈与を受けた年の翌年以降4年内の贈与税額の計算
           A ((b+a×1/5)−110万円)×税贈与税の税率−控除額
           B (b+(a×1/5))−110万円)×贈与税の税率−控除額
           贈与年以降4年内の贈与税額  A−B

 住宅取得資金の贈与について、ちょっと注意点をいくつか。
 ◎ この規定は住宅の取得についての規定ですから、土地の取得に充てた場合は適用はありません。
   ただし建売やマンションの取得など、住宅と土地の取得を同時に行うときは、土地部分に充てられていても問題ありません。
 ◎ 父母又は祖父母からの贈与について適用があるのですから、義父義母からの贈与については適用がありません。
   また、曾爺ちゃんや曾婆ちゃん、兄弟姉妹からの贈与についても適用はありません。
 ◎ 現在の法律では平成12年までの適用となっていますが、次々と延長されていますので、また延長されることでしょう。
 ◎ 基礎控除を先取りしていますので、翌年以降4年間は基礎控除が使えない結果になります。
 ◎ 対象となる金額が1,000万円以下であるというだけで、もっとたくさんの贈与をしても構いません。
   ただ、特例の対象にはならない(通常の贈与と変わらない)と言うだけです。
 ◎ もっとも、特例の対象とならない住宅取得資金の贈与をするくらいなら、もっと良い方法があります。
   それは、贈与者が住宅を取得して、その住宅を贈与する方法です。
   家屋の評価は固定資産税評価額で計算するので、金銭による贈与よりは間違いなく安くなります。

 それでは、設例を設けて計算してみましょう。
 父から住宅取得資金を1,100万円、祖父から土地を200万円を、合計1,300万円の贈与を受けたとします。
 上の算式に当てはめてみますと、その年については…
   A ((1,100万円×1/5)+(1,300万円−1,100万円)−110万円)×25%−30万円=47.5万円
   B ((1,100万円×1/5)−110万円)×10%=11万円
   C (A−B)+B×5=91.5万円
 つまり、91.5万円となります。
 もし仮に、この贈与について、特例を利用しなかったとすると…
   (1,300万円−110万円)×50%−190万円=405万円
 この差(405万円−91.5万円=313.5万円)が、特例を適用したことにより税額が安くなった部分です。
 いかに得か分かりますね。

 さて、基礎控除を先取りした計算であるということは、先に述べました。
 では、そのことを計算してみましょう。
 その翌年、200万円の現金の贈与を受けたとします
   A ((200万円+1,100万円×1/5)−110万円)×25%−30万円=47.5万円
   B ((1,100万円×1/5)−60万円)×15%−7.5万円=16.5万円
   C A−B=310,000
 もし仮に、過去に特例を利用していなかったとすると…
   (200万円−110万円)×10%=9万円
 この差(310,000−90,000=220,000円)が、基礎控除を先取りした事により税額が増加した部分です。

 さて、基礎控除を5年分先取りしていると言うことですから、550万円までなら贈与税はかからないことになります。
 ただし、先に基礎控除を使い果たしていますので、翌年以降4年内は基礎控除は使えません。
 翌年以降に高額の贈与を予定しているときは、予め試算してからの方がよいでしょう。
 一生に一度限りの規定ですしね。

 贈与税の速算表も書いておきましょう。
        ┌──────────────────────┬───────┬────────┐
        │   基礎控除・配偶者控除後の課税価額   │ 税   率 │ 控  除  額 │
        ├──────────────────────┼───────┼────────┤
        │      0万円超     150万円以下│    10%│     0万円│
        │    150        200    │    15 │     7.5│
        │    200        250    │    20 │    17.5│
        │    250        350    │    25 │    30  │
        │    350        450    │    30 │    47.5│
        │    450        600    │    35 │    70  │
        │    600        800    │    40 │   100  │
        │    800      1,000    │    45 │   140  │
        │  1,000      1,500    │    50 │   190  │
        │  1,500      2,500    │    55 │   265  │
        │  2,500      4,000    │    60 │   390  │
        │  4,000     10,000    │    65 │   590  │
        │ 10,000               │    70 │ 1,090  │
        └──────────────────────┴───────┴────────┘

 

 

2.贈与税の配偶者控除

:贈与税にも所得税同様、配偶者控除があると聞いたのですが、これについて教えて下さい。

:贈与税にも配偶者控除が存在しています。
 ただし、贈与税の配偶者控除は、所得税の配偶者控除とは相当毛並みが違っています。
 贈与税の配偶者控除は、婚姻期間が20年以上である配偶者に対して居住用の不動産等を贈与した場合に、基礎控除60万円以外にも、2,000万円の控除を認めようというものです。
 この配偶者控除は同一の配偶者からの贈与については、一度限りとされています。
 従って、再婚したような場合、かつての配偶者からの贈与についてこの規定の適用を受けていたとしても、現在の配偶者との間で要件を満たしてさえいれば、何度でも適用を受けることができます。
 まぁ実際は、2〜3回が限度かも知れませんが。(笑)
 この規定の具体的な適用要件は次の通りです。
  適用要件  :婚姻期間が20年以上であること。
        :居住用の土地又は家屋の贈与を受けたこと 又は
         居住用の財産を取得するための金銭の贈与を受けたこと。
        :その贈与があった年の翌年3月15日までに、その贈与を受けた居住用の財産に居住していること かつ
         引き続き居住の用に供することが確実なこと
        :現在の配偶者からこの規定の適用受けたことがないこと。
        :期限内に、贈与税の確定申告書を提出すること。

 控除額は、基礎控除60万円以外に、2,000万円の配偶者控除が認められます。
 従って、2,060万円までの居住用財産の贈与については、贈与税はかかってきません。
 それでは、設例で試算してみたいと思います。
 配偶者より、3,000万円の居住用財産の贈与を受けた場合。
   特例無し:
    (3,000万円−60万円)×60%−390万円=1,374万円
   特例あり:
    (3,000万円−2,000万円−60万円)×45%−140万円=283万円
 この様に、特例を使わないと1,374万円もの贈与税がかかってきますが、特例を使うことにより283万円の贈与税で済みます。
 その差は実に1,091万円に上ります。
 試算したように、なかなか美味しい制度ですので、活用されると良いかと思います。
 将来の相続税対策にもなりますしね。

 この規定は、住宅取得資金の贈与とは違い、土地の取得でも適用されます。
 また税法上、配偶者と共に居住しなければならないという要件もありませんので、贈与者と受贈者が違う居住用不動産に居住していたとしても、問題にはならないと思います。
 例えば…、ご主人と一緒に住んでいた奥さんが、事情によりご主人が庭に奥さん専用の居住用家屋を新築して、これを奥さんに贈与したような場合です。
 どういう事情かは、ちょっと想像つきませんが…。(^^;)
 ただ、日中はその専用家屋で過ごしていたとしても、夜はご主人の家に戻っているというのでは、どう考えても居住用とは認められませんので、ご注意を。
 夜はご主人が奥さんの方へ行くのなら、問題はないですね。
 って、贈与税の配偶者控除の規定の適用に関しては、ですよ。(笑)

 

 

3.共同購入した宝くじ

:10人で10,000円ずつ出資して、共同して宝くじを購入していたのですが、この度1,000万円が当たりました。
 宝くじには税金がかからないと聞きましたが、このような場合でも何も税金はかからないのですか?

:宝くじは、当せん金附証票法13条の規定により非課税とされているため、課税されません。
 一切課税されないため、手元にはマルマルの金額が残ることになっています。
 これは、多人数で共同購入していたとしても全く同様のことです。
 各人の出資額に応じて当選金を分配すれば、何ら問題ありません。
 つまり、各人が10,000円ずつ出資して、100,000円分の宝くじを購入したのですから、1,000万円が当選したということは、各人が100万円ずつ分配を受けるのなら、まったく問題ありません。
 ただし、出資割合を無視して当選金を分配すると、贈与税の問題が生じてくることになります。
 どういうことになるかと言いますと、一旦出資額に応じた分配を受けた後に、改めて贈与があったことになるのです。
 極端に言いますと、共同して購入した10人の内、1人だけが当選金の全部を受け取ったような場合です。
 この場合だと、他の9人から100万円ずつ、合計900万円の贈与があったことになります。
 残りの100万円は、自己が出資した部分ですからね、全くの非課税です。
 さて、この900万円の贈与があったとしますと、それにかかる贈与税はといいますと…、216万円になります。
    (9,000,000円−1,100,000円)×40%−1,000,000円=2,160,000円
 金額が大きいと、贈与税額も飛躍的に大きくなってきますので、ご注意下さい。
 最高税率は、70%となっていますので。
 また、当選発表後にその宝くじを贈与すると、当選が確定していますので贈与税の対象になります。
 その宝くじ自体に、当選金相当額の価値があるからです。
 ただし、当選発表前の贈与なら、贈与税の対象にはなりません。
 考えてみれば当然ですが、当選はまだ確定していないからです。
 つまり、当選したことを確認の上で贈与すると贈与税が課税され、当選発表前の贈与だと贈与税は課税されない、こうなります。
 まぁ、当選が確定していない宝くじでも、1枚につき多少の評価は必要かも知れませんが。(^^;)
 いずれにしても、贈与税の基礎控除(110万円)以内の金額でしたら、問題はありません。
 はずれ券は評価なんかしなくて良いですよ。
 二束三文の価値しかないですから。
 しかしまぁ宝くじって、買わなきゃ当たらないし、買っても当たらないし…、一体どうすりゃ良いんでしょうね。(笑)

 

 

4.損害保険について

:月額3万円(年間36万円)の保険料を私が負担して、妻を被保険者として損害保険の加入していました。
 この度、この保険が10年で満期となって、500万円の満期保険金を妻が受け取りました。
 毎年の保険料は、贈与税の基礎控除額以下ですから、贈与税は関係無いんじゃないのですか?
 で、満期保険金は妻が所得税の申告をすれば良いことになると思うのですが…。

:この様に思っている方は実は大勢いらっしゃいますし、私の周辺でもこういう話は良く聞き及んでいます。
 で、どうなるかと言いますと…、
 印鑑を持って税務署へ来るようにと連絡が来て、贈与税の申告書を提出して、贈与税を納付することになります。(^^;)
 上記の例ですと、贈与税は845,000円の贈与税がかかる計算になります。
   注:(500万円−110万円)×30%−47.5万円=69.5万円
 ところが、所得税の対象になるのだとすると、70,000円で済むことになります。
   注:他に所得が無いと仮定した場合
     (500万円−(36万円×10年)−50万円)÷2=70万円
      70万円×10%=70,000円
 この差は実に775,000円に及びます。
 パソコンとノートパソコンを買って、無線LAN構成にしても、まだまだお釣りがくる金額です。(笑)

 なぜ、贈与税の対象になるのでしょうか、なぜ所得税の対象にはならないのでしょうか。

 実は、相続税法第5条で次のような規定があるのです。
 まずここから見ていきたいと思います。
 相続税法第5条(省略しています):「損害保険契約の保険事故の発生により保険金を取得した者が、その契約に掛かる保険料の全部を負担していない場合には、その保険金は、その保険料を負担した者から贈与により取得したものとみなす。」
 この規定は、生命保険契約や共済契約などでも全く同様に取り扱われます。

 つまり、保険金を受け取った場合に、自分がその保険に係る保険料を負担していないのなら、保険料の負担者から贈与により保険金を取得したものとみなしますよ、という訳です。
 自分が保険料を負担した部分については、当然ですが贈与税はかかりません。
 別に、非課税というわけでは無く、所得税が課税されるから贈与税の対象にはならないだけなので、ご注意を。
 世の中、そんなに甘くはありませんね。(^^)b
 ところで、このような話は、契約の際に保険屋さんから充分な説明があれば何ら問題はないのですが、なかなか説明がない場合も少なくないようです。
 中には、説明を受けたにもかかわらず、忘れてしまった人もいるでしょうし。
 また、税務署にはバレ無いだろうと、たかをくくっている人も居るように聞きますが、こーゆーのは問題外ですね。
 保険金の金額に応じて、保険会社から税務署に対して支払調書が出ていますので、まず把握されていると思って間違いありません。
 税務署から連絡が来てから慌てないように、是非とも注意しましょう。(笑)

 さて。
 それでは、どうしても保険料部分だけを贈与したいときはどうすればよいのでしょうか。
 答えは簡単です。
 つまり、一旦受贈者に対して金銭の贈与の事実があったのだと、誰しもが納得するようにすれば良いのです。
 そして、その金銭を保険料に充当しているだけなんだと、税務当局を納得させられればいいのです。
 贈与により取得した財産はどう使おうと、受贈者の自由なのです。
 従って、「贈与を受けた金銭を保険料の負担に充てているのだから、保険金を取得した際には必ず贈与にする」、などとは言えないのは当然です。
 保険料を負担しているのは、贈与者側ではなく受贈者側なのですから。
 一旦贈与もせずに、直接保険料負担者の口座から保険料を引き落としをしているから、贈与税の対象になるのです。
 これで「確かに贈与しました。」と言ったところで通用しないのは、ある意味当然ですね。
 具体的な方法については私は書きませんので、皆さんご本人で色々と考えてみて下さい。m(_ _)m
 そして贈与により取得した金銭を保険料に充てた場合、当然、本人が保険料を負担していることになるのですから、満期になって受け取った保険料は、所得税の対象となりましょう。
 もう、贈与税の対象になることはありません。

 

 

5.予想外の贈与税が…

:私は多少の土地を所有しているので、その一部を息子にやろうと思い、私名義の土地を息子名義に変更登記をしました。
 ところが先日税務署より連絡があって、「贈与税がかかりますので、申告してください。」と言われました。
 税額を尋ねると、1,000万円ほどになると言います。
 安易に名義を変更したのがいけなかったようですが、そんなにたくさんの税金が掛かってくるとは思いもしませんでした。
 とは言うものの、息子にも私にもこんなにたくさんのお金はありません。
 どうすれば良いでしょうか?

:財産の贈与を受けると、贈与税が課税されます。
 安易に名義を変更するとこういう事態にもなり、慌てなければならないことになります。
 さて、解決方法ですが…。
 まず、納付できれば、納付してしまえば何も問題はありません。
 しかし、納付するだけのお金が無いとのことですので、別の方法を考えてみましょう。
 贈与税には延納の制度がありますので、この方法を使うのも一法です。
   ☆延納
    1.贈与税額が10万円を超え
    2.年賦延納期間が5年以内で
    3.納期限までに納付することが困難である場合に
    4.その納付を困難とする金額を限度として、延納が認められます。
 相続税の場合は物納の制度もありますが、贈与税については物納は認められていません。
 本来すべての税金は、金銭納付を原則としています。
 そのうえで、相続は自分の意志に無関係に発生するモノに対し、贈与は自分の意志で贈与契約を結ぶためだからです。
 自分の意志でもらった以上、原則通り金銭納付をして下さいと言うのが趣旨です。
 ただ贈与税は、財産課税の性格を持つ税金のため、多額の金銭を一時に納付するのが困難な場合もあるでしょうから、延納の制度が設けられているわけです。
 延納の場合、延納に掛かる利子税が年6.6%もかかってしまうのはネックになるでしょうか。
 他に土地があるのなら、これを担保に銀行等でお金を借りる方が、延納よりはまだマシかも知れませんね。

 さて国では、受贈者が払えない場合の事を考え、租税確保の観点から、連帯納付の規定を定めています。
 一般に、贈与税はもらった者が納付するように思われていますし、事実そういう例が一般的です。
 ところが、余り知られていない事なのですが、贈与した側も連帯債務者として納税義務を負っているのです。
 相続税法34条の4に、連帯納付の規定が設けられています。
   ☆連帯納付
    財産を贈与した者は、その贈与により財産を取得した者のその年分の贈与税のうち、
    贈与した財産の価額に対応する部分の金額について、贈与した財産の価額に相当する
    金額を限度として連帯納付の義務がある。

 それでも贈与税が払えないときは、どうしましょうか。
 もし仮に、その登記自体が軽率・過誤・錯誤であったとすれば、税務署にその旨を連絡し、速やかに登記を取り消しましょう。
 その登記が軽率・過誤・錯誤であった以上、当然ですが贈与には該当しません。
 つまり贈与ではない以上、贈与税はかかってこないことになります。
 今後は贈与するとき、納付税額も良く考慮に入れてからにする方が良いでしょうね。

 

 

6.贈与税法って、無いの??

:贈与税法って無いと聞いたことがあります。
 でも現実には、贈与があったときには贈与税は課税される訳ですから、贈与税法が無いとは思えないのですが…?
 なぜ贈与税法が無いのに、贈与税が課税されるのですか?
 贈与税法が無くても、贈与税を課税しても良いのですか?

:日本では、租税法律主義を採用しており、法律に基づいてしか課税されることはありません。
 つまり、法律に基づかずに税金が課税されることはあり得ません。
 従って、もし贈与税が法律に定められていないとすれば、贈与税が課税されることは絶対にありません。
 それでは試しに、六法全書や租税六法などを開いて、“贈与税法”を調べてみて下さい。
 ところが…どこを調べても無いのですね、贈与税法は。
 ここで問題になるのは、贈与税法が無いのになぜ贈与税が課税されているか、ということになるのですが…。
 現実に贈与税が課税されているのですから、どこかに贈与税は法律として規定されているはずです。
 どこに規定されているかといいますと、実は相続税法に規定されているんです。
 相続税法には“相続税”と“贈与税”が定められており、一税法二税目といわれています。
 なぜ、相続税法の中に、贈与税が定められているのでしょうか?
 相続税と贈与税とは、どんな関係にあるのでしょうか?

 この事を考えるにあたって、もしも贈与税が無かったらどうなるのか、ということを考えてみたいと思います。
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 とある資産家が、自分の持つ財産を子孫に残したいと考えました。
 ところが、このまま自分が死んで相続が始まってしまうと、子や孫には多額の相続税が課せられてしまいます。
 困ったこの資産家は、税法の隅から隅まで目を通し、何か良い方法はないかと色々考えました。
 寝食も忘れて、何日も何日もその事ばかり、ただひたすら考えました。
 そしてある日、資産家は飛び上がりました。(゚O゚)
 良い方法を思いついたのです!
 その方法とは…、“自分が死ぬ前に、自分の持つ資産を子や孫に贈与してしまう”という方法でした。
 もちろん、贈与税は無いので、贈与税が課せられることはありません。
 この資産家は、早速その日から、せっせと自分の財産を子や孫に贈与し始めました。
 事実、後日この資産家が死亡した際には、ほとんどの財産は子や孫のものとなっていました。
 資産家のモノはと言いますと、自宅と若干の動産しか残っていなかった事からも分かります。
 結局この資産家の思惑通り、わずかな相続税を納付しただけで済み、ほとんどの財産を子や孫に移転させることができました。
 その後、申告書の提出を受けた税務署は、“こんなはずは無い”と意気込んで調査にきました。
 しかし結局、めぼしい財産はすべて子や孫に贈与されており、相続税の対象にはならないモノばかりだったのです。
 悔し紛れに、若干の計上漏れを指摘することはできましたが、結局はすごすごと帰って行ったのでした…。
 メデタシ、メデタシ…?(^^;)アリャ・・・?
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 この話でお分かりの通り、もしも贈与税が無いとすると、相続税が安易かつ容易に回避されてしまうのです。
 この相続税が回避されないように、贈与税が設けられたのですね。
 このため、贈与税は相続税の補完税などという言い方もされています。
 また、贈与税の方が相続税よりも高くなっているのも、そうした理由からです。
 というのも、相続税も贈与税も共に最高税率は70%となっています。
 がしかし、相続税は20億円超について、贈与税は1億円超について、その最高税率が適用されるので、相続税の方がかなり安いことが分かります。
 基礎控除に至っては、贈与税はわずか60万円、相続税は最低でも5,000万円と、桁違いですしね。
 相続税法が、「贈与は止めろよー、贈与税は高いぞー、相続税は安いぞー。」って言っているようなものでしょうか。(笑)
 詳しい税額については、相続税の『1.相続税額の算出』、『贈与税の1.住宅取得資金』に、それぞれ相続税と贈与税の税率表を記載していますのでご参照下さい。

 

 

 

☆ 法人税関係

 

1.法人にしたら、メリットがあるの?

:私の友人は、10年ほど前から個人で事業を始めて、毎年3月には所得税の事業所得を申告しています。
 その友人が最近「会社にした方が得かなぁ…」なんて言っていました。
 そう言えば、個人で事業をしている人って、法人にしたりすることも多いようなんですけど、何か得なんですか?
 どうせ法人税を払わなきゃならないから、同じだと思うんですが。
 それとも、私の知らないような秘密の話でもあるのかなぁ…??

:個人事業が大きくなってくると、法人成りを考える人は決して少なくありません。
 ただ、法人の方が相手方から信用されるという側面もあるので、法人成りは単に税制上の理由からだけではありません。
 この点には充分にご注意さて、お読み下さい。
 ただ、ここでは税制面に絞ってお話していきますが…。(^^;)

 さてさて。
 ここでも、簡単な設例でお話ししたいと思います。
  個人事業  売   上 … 30,000,000円
        必要 経費 … 12,000,000円
        専従者給与 …  5,000,000円 (妻)
        所得 控除 …  1,450,000円 (基礎控除、扶養控除、社会保険料控除、他)
        青色特別控除…   550,000円 (平成12年の金額ですが、未定です)
        差引 金額 … 11,000,000円 (これに対して、所得税(便宜上、住民税も)が課せられます)
 この設例で、個人に課せられる税額を算出すると
    所得税 … 11,000,000円×30%−1,230,000円=2,070,000円
    住民税 … 11,000,000円× 3%−  70,000円= 260,000円(道府県民税)
        … 11,000,000円×10%− 380,000円= 720,000円(市町村民税)
    事業税 … (11,000,000円−2,700,000円)× 5%= 415,000円
    合 計 …  3,465,000円

 それでは、法人になった場合はどうでしょうか。
  法人状況  売   上 … 30,000,000円
        損   金 … 12,000,000円 (個人でいうところの「必要経費」のことです)
        役員 報酬 … 13,000,000円 (社長8,000,000円と、妻5,000,000円)
        差引 金額 …  5,000,000円 (これに対して、法人税が課せられます)
    法人税 …  5,000,000円×25%  =1,250,000円
    住民税 …  1,250,000円× 5%  =  62,500円(百円未満切り捨て)
            86,200円+20,000円=  86,200円(都道府県民税・20,000円は均等割)
    住民税 …  1,250,000円×12.3% = 153,700円(百円未満切り捨て)
            212,100円+50,000円= 203,700円(市区町村民税・50,000円は均等割)
    事業税 …  4,000,000円× 5.0% = 200,000円
           1,000,000円× 7.3% =  73,000円
           事業税小計        273,000円
    合 計 …  1,812,900円
 なんと、半額近くになってしまいました。
 って、これでは社長に支払った役員報酬に係る所得税等が計算されていませんね。(^^;)
 これでは比較になりませんので、社長個人に課税される税金を計算してみましょう。
  給与所得  役員 報酬 … 8,000,000円
        給与 所得 … 5,500,000円
        所得 控除 … 1,450,000円 (基礎控除、扶養控除、社会保険料控除、他)
        差引 金額 … 4,050,000円 (これに対して、所得税(便宜上、住民税も)が課せられます)
  それでは、計算してみましょう。
    所得税 …  4,050,000円×20%− 330,000円= 480,000円
    住民税 …  4,050,000円× 2%−    0円=  81,000円(道府県民税)
        …  4,050,000円× 8%− 100,000円= 224,000円(市町村民税)
    合 計 …   785,000円
 法人にした場合の、負担税額合計 … 2,597,900円

 さて、上記の結果から言いますと、法人成りする事により867,100円(3,465,000円−2,597,900円)減少することになります。
 これって、結構大きな金額ですよね。
 所得税が大きくて苦しい方は、法人成りを考えるのも一つかも知れません。

 最後に、法人成りすると、なぜ税額の総額が減少するのかの理由を考えてみたいと思います。
 (1)所得税の最高税率は37%であるのに対し、法人税の最高税率は34.5%であること。
    実は以前は、所得税の最高税率は、実に70%もあったため、もっと大きなメリットがあった。
 (2)法人成りして役員報酬を支払うことにより、所得を分散することができる。
 (3)役員が受け取る役員報酬は給与所得に該当することになる。
    給与所得からは、自動的に「給与所得控除」が控除されるため、他の所得(例えば事業所得)より有利。
 (4)法人や事業所得には事業税が課せられるが、給与には事業所得は課せられない。
 こんなところでしょうか。

 また、配当を受けると、更に所得税が安くなる場合もあります。
 これらは、株式会社でも、有限会社でも、扱いに変わりはありません。
 ただし法人は、赤字の場合でも「均等割」として、最低70,000円の地方税はかかりますのでご注意を。
 よく考えて法人成りされて、あなたも明日からは名実ともに“社長”になりますか?(笑)
 株式会社の最低資本金は1,000万円ですが、有限会社場合は300万円ですから…。

 ところで…こーゆー話って、やっぱり秘密の話でしたぁ??

 

 

 

☆ その他

 

1.節税ってなに?

:良く「節税」って言葉を聞くのですが、脱税とはどう違うのですか?
 どっちも税額が減るんだから、同じだと思うんですけど…。

:節税というのは、税法でも予定されており、適用がある者なら当然行うことができる行為です。
 例えば…
  1.青色申告を選択して、所得税で“青色申告特別控除”を適用する
  2.減価償却において、定率法を選択して早めに償却する
 などは、節税の範囲です。
 これにより、税額を減少させる行為は当然合法的ですし、充分に節税の範囲です。

 これに対して、脱税というのは、税法が禁止している行為を指します。
 例えば…
  1.売上の一部を除外して税額を減少させる
  2.架空の人件費を計上する
 などの行為などは違法行為であり、立派な(?)脱税事案に該当します。
 こういう脱税行為は犯罪ですので、これらに対しては重加算税などのペナルティーが課せられることになります。
 重加算税は、真面目に申告した者に対して公平を保つために設けられたもので、懲罰的な意味合いを持っています。
 ここにも課税の公平の概念は生きているのですね。
 ちなみに、延滞税は“利子相当額”ですんで、重加算税とは課される意味合いが違います。

 さて実は、節税と脱税との間に、租税回避という概念が存在しています。
 租税回避とは、税法で全く予定されていない行為をもって、税金を少なくする行為を指します。
 例えば…
  1.死期が近いことを悟った人が、相続対策と称して、孫全員を養子にする
  2.個人から会社に対して、不相当に多大な不動産管理費などを支払い、会社から多くの役員報酬を受ける
 などの行為は、租税回避行為になります。
 1.の行為は、相続税法では禁止されていません。(注:現在、養子の数に対しては制限が設けられています。)
 というのも、そもそも養子にするかどうかは、その当事者個人が決定すべき問題だからです。
 ですから、民法上問題のない養子縁組なら、その養子縁組に対して相続税法がとやかく言う筋合いの話ではないからです。
 税法では禁止されていませんから、当然に相続税の基礎控除の計算の基礎とすることができることになります。
 こういった行為により、税額を減少させるのは節税とは言いませんが、脱税にも該当しません。
 結局、税法上は違法行為でないため、他に問題がない以上、何ら問題なく通ってしまうことになるのです。

 故松下幸之助は、節税策さえ採らなかったと聞いたことがあります。
 経営の神様は、税金を納付するのは当然だと考えていたんでしょうね。

 租税回避行為は、基本的には採用してはならない行為だと考えています。
 脱税は…、こりゃ問題外ですね。(^^;)
 しかし、神様にほど遠い私は、節税策は取るべきだと思っています。
 払うべき税金は払わなきゃなりませんが、払わ無くてもいい税金など、びた一文払う必要は無いのですから。(^^)b

 でも一般の事業主って、節税と租税回避を同等に見ている人が多いんですよね。(^^;)
 ちょっと情けないことではありますが。

 

 

2.消費税を取る小さい店が…

:近所に、ごく小さなスーパー(よろず屋?)があるんですが、その店では消費税を取っています。
 どう考えても、年間3,000万円もの売上があるようには見えません。
 そんな店でも消費税を取ってもいいんですか?
 その店の利益になるだけなんじゃないんですか?
 なんか、ちょっと腹立たしいんですけど。

:税法上の結論から先に言います。
 単に消費税相当額を売価に含めているだけですので、税法上は何ら問題はありません。
 そして、そのお店が免税事業者である場合は…、
 消費税相当額として受け取った額は、売上として認識され、その店の利益の一部を構成することになります。
 つまり、預かった消費税は、税務署に納付されることはありません。
 ここまでは、あなたの仰る通りです。

 さて。
 いくつかの誤解があるようですので、その点も説明したいと思います。

 1.課税売上高が3,000万円を超えているかどうか
 まず、売上高が3,000万円あるかどうかは、外から見ているだけでは決してわかりません。
 店での小売りのみならず、他の店等に対して卸売業を行っているかも知れないからです。
 卸売業で3,000万円を超えていると、当然ですが小売の方でも消費税の課税事業者となります。
 すなわち、消費税を取らなければならないのです。

 2.仕入に係る消費税の問題
 もう一つ、案外理解されていないことなんですが、“商品の仕入や必要経費には、消費税はかかっている”という事実です。
 つまり仕入には消費税が掛かっているにもかかわらず、売上の際に消費税を受け取らないとすると、仕入の際にかかる消費税を回収する機会が永遠に失われてしまうのです。
 だとすると、仕入に係る消費税は、その店舗がすべて負担しなければならなくなるのです。
 これはおかしな話です。
 消費税を負担するのは最終消費者である、と予定されているのです。
 消費税を受け取ってはならないのだとすれば、制度上の不備だと言っていいと思います。

 3.課税事業者の選択
 上記2.に関連するのですが、正当な方法で自分の店で消費税を負担しないようにする方法があります。
 それは、課税事業者の選択という方法です。
 本来は免税事業者ですが、課税事業者を選択することができるのです。
 課税事業者となっているのですから、消費税を受け取らなければなりません。
 この場合、課税事業者の選択の手続きをしているかどうかなど、外からはうかがい知れません。

 4.本当に、税務署には納付されないのか
 それともう一つ、受け取った消費税はその店の利益を構成する、という点に注意して下さい。
 そして、その利益(消費税ですね)に対して所得税や法人税、さらには事業税も課税されることになります。
 このことを通じて、消費者から預かった消費税相当額については、その一部が税務署に納付されることになります。
 まぁ、確かに一部ですが。(^^;)

 腹立たしい気持ちも分からない訳ではありませんが、外部からは簡単に分からない事情も多いんですね。
 この点について、多少なりともご理解していただけましたでしょうか?

 

 

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